05年ハズレエンタメTOP3

余程の小規模展や私的イベントは省くにしても、それなりの規模の物を自分で求めて観たならば、ここにも記録しておきたいのが自分の性分。必ず何らかの感動や気付き、思いが残るから。 [一般エンタメ]はその為に設けてあるカテゴリだけど、それに書く気も起こらない程脱力してしまったエンタメを、うっかり踏んでしまった事もある。 会期中にこき下ろすのが忍びなかった事と、それ以前に、落胆と疑問ばかりを書き記すパワーが出なかった事で、当時はスルーした。 しかし喉元過ぎても今なお残る負の余韻は、来年同じテツを踏まない為にも、最低限記憶にとどめておく必要があるだろう。
という訳で、自分的に今年「うっかりシマッタ〜」だったエンタメTOP3を書いておく。
(★★以下、当然ながら主観による辛口満載★★)



【3位】 「ギュスターヴ・モロー展」〜Bunkamuraザ・ミュージアム

「ベルギー象徴派展」「レオノール・フィニ展」と、大当たり展が続いた後だけに、この落差には驚いた。展示室に所狭しと並べられた約160作の中で、「象徴派巨匠、珠玉の名作」と言えるものは、果たして数点あったのだろうか。時系列に観進むにつれ、疑問は深まる。 まだ未分化な頃の、ちょっとイイカンジな芽が、春が来ても夏が来ても膨らまず花開かず、しおれずとも硬直したまま終わっていく。この苦しみは、観る者にもじわじわと染み入る恐怖となって迫ってきた。
晩年まで一体どのくらいの年月、彼は自分の才能の可能性と格闘し続けたんだろう。サロンでの酷評にもめげず、芸術家に憧れながら自分をあえて「歴史画家」と呼び、日々とにかく描く。うまくいかなくても、気分が乗らなくても、とにかく描く。いつか神が自分にも降りてくる日を夢見て。絵を志してから没まで50年余り、彼は決して諦めなかった。その継続力には、私も創作をする者の端くれとして、勇気付けられるものがあった。


【2位】 「秘すれば花:東アジアの現代美術展」〜森美術館

ヒルの展望台が気に入ったのと、服飾のお店も感度が高くリサーチ向きという事で、そんな森タワーの展示ならば良いだろうと楽しみに行ったのが運のツキ。東アジアの現代アート作家26名とは、一体どのようにして選ばれた人達なのだろうか。正直、学生の作品以下・・・これ以上はアジア叩きみたいになるから自粛するけど。無料の展示に期待した私がお馬鹿だっただけの事さ。一階下の52階での有料展示はこんな事は無い筈。草間弥生の「クサマトリックス」とか最高だったし。
チラシが妙におしゃれなのも要注意。良くみれば作品がイイんじゃなくて、チラシのレイアウトやロゴがおしゃれなだけなんだ。
最上階に長時間居てグラグラ酔い、翌日まで気持ち悪かったのも辛かった。自分一人だったら中断したのに、親戚の団体を案内しちゃったんで(汗)帰れなかったんだよな〜。 タダほど高い物は無いという教訓。


【1位】 ミュージカル「オペラ座の怪人劇団四季電通四季劇場 [海]

劇団四季オペラ座の怪人は凄いらしい」---うん。凄かった。ヤラレた。
もう10年以上前になると思うけど、確か日比谷か銀座あたりで市村正親演じる怪人の同タイトルを観た。あんまり良かったので2回観た。この時覚えてる感動と、今年始めに観た映画版の圧倒的な迫力に、何ら疑いを持たずにチケットを入手してしまった。見事にハズレた。
まず基本的にステージが小さすぎて、華やかなオペラ座の雰囲気を出すのにどうしても無理がある。豪華絢爛の大舞台な筈の場面が、どう頑張ってもショボい下町の小劇場風なのだ。申し訳無いが役者も3番手クラスばかりという印象。 肝心の怪人には全くカリスマ性が無く、普通に腹の出始めた暗い小男だし(歌はまあまあ)、クリスティーヌは見た目だけのお人形さんで良いにしても、相手のラウルが年が行き過ぎて親子のよう。 唯一訳知りの教育係のおばさん役が良かったくらいで、あとの脇役達も精彩が無く・・・ はっきり言って、まずはビジュアル面がどうにもこうにも冴えないのだ。それを上回る歌唱力とかダンスとか、何か魅力があればいいのだが、それも程々クラス。 この演目はロングランのせいか、役を一人に固定せずに次々と色んな役者が演ずるらしいので、たまたま悪い組み合わせに当たったのだと信じたい。
しかしクライマックス、怪人の一番の見せ場とも言えるマスカレードのとこで、階段の最上段にドクロの仮面を被った、4頭身の怪人が登場した時にはビックリしたなあ・・・マンガみたいだった。もう、引きつり笑いしか出なかったよ。
劇団四季と言えば日本のミュージカル界ではトップクラスと思っていたが、こんな程度だったのか。大した期待も持たずに物見遊山の広い心で観に行ったならば、ここまで落胆はしなかったんだろうが。美術展や映画とはチケ代も段違いなので、損した感は大きい。これからは気をつけよう。
せめてものフォロー(?)しとくと、SHOCKに出てた今拓哉さんは四季出身だと思うけど、歌唱も演技もビジュアルもバッチリだった。怪人よりはラウルタイプかな。このくらいの人が現役にも居るとは思うんだが・・・やっぱりハズレくじ引いたのかな。