映画「アズールとアスマール」8/14

評価:★★★★★

●公式HP http://www.ghibli-museum.jp/azur/


文句無しの素晴らしい芸術娯楽感動作品。物語、風景、デザイン、文化、言葉・・・全てが、ため息が出るほど美しい。全ての場面が、彩色の見本になるようなハイセンスな色たちに彩られ、次々と展開される。淡々とした中にじわじわと染みてくる感動は、押し付けが無く、とても奥が深い。


一回の鑑賞ではとても足りなくて、これから色んな人を誘ってまた観ようと思っていたのに、シネマシティの上映スケジュール見たらもう終わり・・・? 渋谷のシネマアンジェリカではまだやってるみたいだけど、この猛暑の中都内までは・・・。
東京では2箇所のミニシアターでしかやってなかったんだなあ。母国フランスでは大量集客の大ヒットとなったそうなのに、日本では何故にこんなにマイナーな小規模公開なんだろう? これこそ老若男女全ての人観て欲しいものなのに。


デザインやファッションに興味が無くとも、この美しさの迫力は誰にでも感じられるものだろう。イスラムやフランスに興味が無くとも、観たらきっと興味が沸いてくる。2人の美しい青年の交流に関心が無くとも、観てたらいつの間にか感動してしまう。奥深くも表面だけでも、深刻にもお気楽にも、マルチに楽しめる、最上質作品。訳の分からない子供にも、美しい絵本を見る感覚で、是非観て欲しいと思う。


今回は、母と妹と私の女3人で観たんだけど、観た後それぞれの知識や感想をすり合わるのが楽しかったし、また深く味わい直せた。


私はヨーロッパやイスタンブールに行った事があるので、当時見た、今では過去の遺跡となり古びた町並みやお城が、中世当時最盛期の生き生きとしたピカピカの姿に修復再現された姿を見るようで、とてもエキサイティングだった。イスタンブールのバザールで会った人々の話しかけ方や商売の手法は、大昔から受け継がれている文化なんだなあと再認識。それぞれの国の美意識の完成形を見ることによって、その伝統や美しさに改めて圧倒された。


毎年アフリカ大陸に行っている妹は、アラビア語もフランス語も少しだけ分かるところがあり、会話の中に現れる単語の解釈などを聞けて、また面白かった。イスラムには物乞いを皆が助け、普通に生きていけるという文化があり、日本の感覚とはこんなに違うものなんだという事も分かった。(妹はよく現地人から持ち物をせびられるのだけど、それは別にやましい事や卑しい事でもなく、普通の事なんだそう) ちなみに乳母の顎の刺青は、「子供がいる女性」のするものだとか。(なんで顎ヒゲみたいなライン描くのかなって不思議だったんで納得)


さすがの年の功で外国文化の知識の豊富な母には、あのマークはユダヤのシンボル六芒星だとか、フランスによる植民地支配や王国の歴史などを聞けて、またまた理解の助けになった。母曰くイスラム教は偶像崇拝を禁じているそうなので、あの美しい文様芸術があそこまで発展したのだなあと思えた。


劇場で売ってたパンフ(800円)か絵本(2100円)か、どっちを買うか迷ったけど、思い切って絵本を買って良かった。パンフは印刷もソコソコの出来で絵の枚数も少なかったけど、絵本は開けてみたら72ページもあって印刷も綺麗な豪華本。映画では通り過ぎてしまった会話や筋もじっくり追えて、大満足の一点だった。
DVDも出たらまた観よう〜。